『まんがキッチン』読書中。福田里香さんのフード理論語りは何度聞いてもおもしろい。しかし残念なのは、女性作家に限定しているせいか、コマツ的食べ物(≒食事)の扱いがもっとも素晴らしい漫画『よつばと!』に一切言及がないところ。これを機会にと食のシーンだけに注目しながらパラパラと読み直してみたら、またまた新たな発見があったのでその一部をちょっと紹介。


2巻の「ケーキ」の回は、主人公である5才の女の子よつばと、隣の家に住んでいる小学生の恵那、その友達のみうらが、急に食べたくなったという「かあちゃん」に頼まれて、みんなでケーキを買いに行くという話だ。

ケースを前にしてのそれぞれのケーキ選びは、3人の性格と年齢(!)が反映されていて興味深い。よつばはもっともスタンダードなイチゴのショートケーキを選ぶ。みうらはさらっとチョコレートケーキを選び、恵那は真剣考えた結果、モンブランを選ぶ。そんな二人によつばは、素直な感想を口にする。

チョコレートケーキ ← 「くろかー、いがいとおとなだなぁ」

モンブラン     ← 「あんましだなドロみたい」


ここで年齢という点に注目してみよう。お店に入ったよつばが、ケースを見回しながら言ったセリフに選択の兆しがよく現れている。

「どれだ!? どれがケーキだ!?」

「これ全部ケーキだよ」

「なんとまぁ!」


よつばはケーキの種類をほとんど知らないのだ。それ故にもっともケーキらしいケーキ、ショートケーキを選んだ。一方、恵那とみうらは様々なタイプを知っているので、超ベタなそれではなく、少し個性の見えるチョイスをしている。


そこにつなげて9巻の「そら」という回の会話を引いてみよう。

「何買ってきたの?」

「イモスティック 初めて見たから買った」


これは大学生であるあさぎと虎子のやり取りだ。二人くらいの年齢になると、初めて見たもの、希少性のあるものを選ぶ、という傾向が、ここにさらっと描かれているのだ。年齢、もっとあからさまに言えば経験の差によって、選択の根にある部分が違っている。これは面白い発見だった。


再度ケーキの回に話を戻そう。三人にお使いを頼んだ「かあちゃん」。最年長である彼女はいったい何のケーキを、どのように選んだのだろうか。娘である恵那に頼んでいるセリフから、それを確認してみよう。

「私はイチゴの イチゴのよ」


ケーキの名前すら思い出せない「かあちゃん」。原点回帰のようなチョイスである。だがしかし、こんな小さなコマの、一見ぼんやりとしたシーンでも、普段そんなにケーキ食べてないんだな、という食生活がわかったり、そういうものでも急に食べたくなる時あるよなー、などという共感を生んだりするのだ。あっぱれなフード表現である。