コマツさんは思った。一年で唯一、嘘をついても許される今日という日にこそ、みんなに本当のことを言うべきだ。

「今までずっと隠していたけれど、実はお前の母親と性的関係をもっているんだ。俺、マザーファッカーなんだ、ごめんな」

そんなメールを皮切りに、小学生のころ給食費を盗んだあげく被害者を加害者に仕立て上げたことや根拠のない有力株情報を流したこと、さらには破廉恥なコスプレを楽しむ趣味があるかのような合成写真を作りネット上にばら撒いたことなどを、それぞれ被害者と思われる友人に送りつけた。

「いやー、最初マジびっくりしたけど、今日エイプリルフールだもんなー。久しぶりにこんなメール来たんで忘れてた(笑)」

大方の反応はそのような軽いものだった。一方コマツさんはというと、墓まで持っていくつもりだった真実をほとんど吐き出し、胸の内はすっきり爽快リフレシュ。恍惚すら感じていた。平和的解決とはこのことをいうのではなかろうか。