酒見賢一後宮小説』を読む(ブックオフにて100円購入)。日本ファンタジーノベル大賞、第一回目の受賞作にもかかわらず、出だしが「腹上死であった、と記載されている」ではじまるという変わった作品。15年以上も前のもので、その当時の自分はまだ、高橋留美子漫画を読むふける小学生でした。

後宮ってのは大奥みたいなもので、舞台はたぶん中国。皇帝が倒れちゃったんで後宮も再編しますよーってことで、いろんなところからいろんな美女が集められ、机上のSEX講座に強制参加させられ、さぁ知識を生かすわよ〜ってところであららららお国が崩壊してしままう。内容から連想されるような艶かしさはほとんどなく、どこか小馬鹿にしたように描かれていた。

集まった女たちがみな個性的なのが良い。彼女たちがいかがわしい授業を受けているという時点で、もはやハーレム系のギャルゲーのようですが(しかもロリコンもの!)、後宮という場とは対照的方向に進展するのが面白いところ。

後半段々と幻想的な展開をしはじめるので、そこがファンタジーなのだろうか? テレビゲームのファンタジーに慣れすぎた者にとっては、その点なかなか納得できないところではあると思う。第三回受賞作、佐藤亜紀『バルタザールの遍歴』を読んだときもそれは感じたが、個人的にはそっちのほうが面白いし、ありきたりなファンタジー感の作品なんて、今更読む気になれません。



田中秀臣『経済論戦の読み方』を読む。二年前くらいの新書だけど、読みやすいし今から見ても特に違和感はなかった。当時言われていた不景気から、デフレからどう抜け出そうかって問題に対して出された様々な発言をまとめて、バッサリやってしまおうという本。

経済関連の本は最近つつき始めたばかりなので、何が正しい間違っているといった判断はもうちょっと保留しておこう。とは思うものの、自分が信頼できると感じたアマゾンのレビューアーなんかが評価している本をたまーに読んでみると、基本的には大体同じ事が書かれている。

書き方がとても面白い、というか戦略的なのが興味深い。まず目立つのが各章末に設けられたおまけ的なブックレビュー・コラム。この辺の話で名前が出ている本をバシバシ切っていく。自分のようなさほど頻繁には経済関連の本を読まない人にはとても効果的。また本の中で感情的な対立により本来の問題がそれていくという状況を批判的に書いているので、書名を『経済論戦の読み方』という、あたかも中立であるかのようなものを選んでいるのも、意識的に行われたものだろう。


経済論戦の読み方 (講談社現代新書)後宮小説 (新潮文庫)