自宅の近くに長く緩やかな坂があり、そこを上りきったところに中学校がある。最寄駅との間に位置するので、私はその坂を頻繁に利用する。日が落ち、散在する街灯の光に照らされたその坂を、私は下った。その付近に光が届かないせいで、少しおそろしげにみえる校門にむかって、制服を着た二人の女の子が上ってきた。もう帰っちゃったかな? とひとりが弱々しく言うと、45分ごろに出てくるっていったからまだ大丈夫なはず、ともう一人が興奮気味に言う。偶然そこを通りかかった私は、頑張ってください、と口には出さず祈り、坂をゆっくりと下った。

坂道の先には川が流れており、そこと交差するときにこの少し長めの坂は終わる。川のにおいが届くところまでくると、道続きの橋にまた制服を着た女の子がいることに気づいた。同じ制服で人数もまた二人。もうちろん先程の二人とは別人で、それは暗いながらも判断できた。その二人は石でできたポールの上に、顔を向かい合わすことなく並んで座っていた。私がその横をゆっくりと通り過ぎると、彼女たちの会話の一部が自然と耳に入ってきた。あのコほんとに行っちゃったね、と髪の短いほうが言うと、短い沈黙。・・・・・・うまくいくと思う? とそこに付け加えると、髪の長いほうが鼻で笑い、言わせないでよ・・・・・・、と言った。