小さなパン屋は旨い。という幻想を信じていたため、目に入ったそのような佇まいの店に入ってみる。だが、足を踏み入れてみると、残念な現実が待っていた。「旨そうじゃない≒不味そうだ」、と私の鼻が言っている。私の眼球も言っている(ふたつとも)。舌にのせるまでもなく身体がそう反応しているのだ。

パン屋というものは、なぜだか買わないで退出してはいけない雰囲気がある。ので、購入することになる。ならざるおえなくなる。「なぜおいしそうと思えないものにお金を払わないといけないのだろう?」という素朴な疑問を抱えながら、私は狭い店内をうろうろうろつく。悲しいことに、それでもお買い物はどこか楽しかったりする。

私は自暴自棄になっていたのかもしれない。それとも持ち前のくだらない好奇心が反応しただけであろうか。とにもかくにも結果的に、私はいくつかの妥当な品と合わせて、プリンパンなる商品をトレイにのせる。のせてしまう。190円(税込)。高い。冷蔵されている。冷たい(やや)。

自宅に到着した私は、多少疲れていたのでプリンパンは食べない。お楽しみを取っておくためではない。未知なる食物を口に放り込んだ結果、疲れが掛け算されるのではないかと懸念していたからだ。

冷たいものは入浴後に食べるのです。私は遂に、「餡子たっぷりあんぱん(仮)」のような姿の、冷やされているためどことなくシュークリームのような印象も受ける例のモノ=プリンパンを、食べる。かじる。食道に押し込む。お、お、おいしく、ナイ。断面を覗くと中には甘さ控えめのプリン、と甘さ控えめの生クリーム。う、お、お、お、おいしくない。ふた口目はむしろ不味い。190円(税込)もしたのにすこぶる不味い(ちなみに他のパンもおいしくはなかった)。

私の直感(小さいパン店は旨い)は間違っていたが、私の直感(店内の雰囲気からして不味そう)は間違っていなかった。明日からも自分の感覚を信じたり信じなかったりしながら生きていこうと思う。