■「幼馴染」という関係に、フィクションの臭いをプンプンと感じるようになったのは果たして何時ごろのことだろう。ある時期過ぎればまったく結ぶことができない、っていうかそういった関係を意識したころには手遅れダッ!というコレほど受けてに残酷な設定もないだろうに、漫画やらテレビドラマやらで濫用され、男女問わず未だに憧れの対象になっている(ように見える)。

一度冷静になって欲しい。そんなものはないのだ。百八歩譲ってあったとしても滅多にない。そしてそんな関係でアレがこうしてソレがああしちゃうなんてことはもっとないのである。いい加減目を覚すがいい若人たちよ。そんなもんファンタジーなのだッ!などと思っていたら、意外と身近なところに男女の幼馴染なる関係が存在していたことに先日気づき、驚いて開いた口が塞がらなくなってしまい、どうせならとおせちの残りをポンポンと放りこみながら一日過ごすことになってしまった。

なぜ今まで気づかなかったのか分からないが(たぶん己が鈍感なのだろう)、男女どちらも中学以来の友人。先日の新年会の席で(やっと!)その関係を知ることとなった。二人は家が近く、小さなころから見知っていている中なのだという。それだけでは別になんとも思わなかったろうが、こんな話が続いたのだ。

女のほうは地方で働くことになり友達がほとんどいない。唯一の同性の同期がメンタルでやられてリタイヤしてしまい、さびしい中さらにトドメを刺されたような状況に追い込まれてしまった。そんな時タイミングよく電話をかけ慰めたのが幼馴染の男であった。話を聞いてもらったこと、またとても親しい人間の声を聴けたということもあるだろう。それで随分と楽になり、なんとか持ちこたえることができたのだという。

妙にできた話だと思ったが、男の方が心配してか電話はそこそこ頻繁にしていると聞き「ああそれでか」と納得した。

そこあとできちゃって、さらにできちゃってそのままできちゃった結婚しましたパンパカパーン♪みたいな展開を期待していた方には大変申し訳ないが、話はここで終わってしまう。そもそも幼馴染がそのまま結婚するって流れは、今まで人間観察から見て「なんかキモチワルイ」のだけれどみなさんはどうだろう。個人的にはこの「幼馴染」という関係が大きく変わることなく、そのままゆっくりと濃密なっているという事実にグッときた。

年始が終われば女の方はまた地方に戻っていく、男の方も自信たっぷりで生きているわけでは決してなく、彼女ができないことに薄っすらコンプレックスを感じている。その話を聞いた新年会で、女は楽しいそうだが「これもそのうち終わるのだ」という思いがちょくちょく顔に出る。男のほうは趣味のスポーツで汗を流せるぶんいくらか余裕があるものの、カップル参加が多かったせいもあってか、そのテの話がでると妙な淋しさが漂う(こっちの思い込みかもしれないけど)。

悪趣味な自分には、それすらもグッとくる要素になってしまうのだから我ながら酷い。

フィクションの「幼馴染」よ、リアル「幼馴染」は凄いぞ。