■「ちょう」君に首っ丈なのである。彼のことを知らない可愛そうな方々に紹介すると、「ちょう」君はコマツが通いつめている色街(※コマツ的用語で「色々売っててまるで繁華街のようだね、スーパー」の略)で働く20代前後の、その響きからたぶん中国を出身地にしていると推測される青年のことである。

彼との出会いはアレな感じであった。アレとはつまり、ラブコメでお馴染みの、遅刻しそうだと急いで学校に向う途中で、ドーンと見知らぬ異性とぶつかりーの、倒れーの、睨みーの、怒りーの、罵声浴びせーの、学校ギリ間に合いーの、朝会ぃーの、転校生紹介されーの、朝ぶつかったやつーの、驚きーの、オイオイ隣の席かよーの、改めて見たら結構いい感じーのの、ほのかな思い抱ぃーの、のことである。

つまり第一印象はすこぶる悪かったのだ。ある日、コマツさんがいつものように特価品だけをつめこんだ買い物カゴをレジ前に差し出すと、もぎょもぎょと聞き取れない声で応対され、終いには彼らのキメ台詞である「ありがとうございました、またおこしください」を「あがシタ、またシィ」と極端なまでに短縮されるという言葉の暴力まで受けた。これに対して、「短気と狭い心がチャームポイント」と自負しているコマツさんがご立腹しないわけにはいかない。とりあえず、自己満足的嫌がらせとして、胸につけたネームプレートを覚えてやろうと見やると、そこには「ちょう」と書かれていたのでハッとした。そうか国外の方だったのか。そうと知ればあのような対応にも納得がいくというものだ。

改めてまじまし見ると、彼は近年日本で見ないようなタイプの美青年。180cm以上はあるであろう適度にガッチリした体の上に、適度に凹凸のある爽やかな顔。どこか少女漫画に出てくるようなスポーツマン的印象を受ける。言ってしまえば数年前の韓流ブームを支えた「すれてなさ」がそこにあったわけだ。

他にも顔のととのった青年のレジ打ちはいたのだけれど、例の、若いのにさらに若く見せようと、顔輪郭を隠しつつ目を強調させるあの髪型であるせいで、「ちょう」君の爽やかさは一層際立つのであった。

コマツさんと「ちょう」君との一方的な出会はこのようになされたのである。以来、彼の成長を確認するために、いるときには必ずそのレジを使うようになったのである(事実彼は日々成長している)。まぁそんなことを繰り返していると、凄い好きになちゃうわけで(笑)、ガッキーが出たポッキーのCMの賛辞である「しゃべりも歌いもしなくても、ただ踊っているだけでイイ!」のように、「もうレジを打っているだけでイイ!」というところまで最近きてしまっている。

重症である、が命には別状はない。この冗談の延長線にある有頂天を、行き過ぎない程度に楽しんでいる、そんな今日この頃なのである。