■「あたしマフィアってよく言われるんだよね」、などと急に口にしたので、思わず声を出して笑ってしまったのだけれど、話し手の顔を見ると、決しておふざけで言ったわけではないのだということにすぐ気づいた。

まずはそもそもなぜそんな発言につながったか?ということから説明しなければならない。最近顔を出している地域で繋がっている飲み会で、ある二人と三人で話すと、毎回のように盛り上る。ということを発見したため、では一度三人だけで集まってはどうかということに自然となり、それを実行に移すことになった。

冒頭の発言はその《三人会》でのもので、「親友」について語り合っていた時に出たものだった。「親友」などという言葉を見ると、おいおい随分と青臭いテーマですなぁと思われるかもしれないが、実際の内容はそれとは反対方向に位置する、淀んだ空気が流れるものだった。

思いおこしてみると、この話を最初に切り出したのは、他でもない自分だった。「俺は親友がいないし、必要だと思ったこともない。故にこれからもできないだろう」というような発言をすると、本トかよ〜、のツッコミの後それをみんなで解していき、自分、つまり俺は、親友がいないのではなく、誰とでも相手が親友であるかのように振る舞うことができるだけではないか、という指摘にまで辿り着いた(そういえば以前にも「なぜそんな誰にでも裏表なく話せるのだ」と言われたことがあったあった)。

そして、そもそも「親友」とは一体どんな存在のことを指しているのか?という話題に飛び火し、「あたしマフィアってよく言われるんだよね」という冒頭で紹介した発言に繋がったのであった・・・・・・っていうか、つながってなくね??というツッコミにはたいへん共感でき、だからその言葉を肉声で受け取った際自分も、なんじゃそりゃぁー、とケラケラ笑ってしまったのであった。

「『ゴッド・ファーザー』を思いだしてくれるとわかりやすいんだけど――」と彼女は続ける。「『親友』という括りよりも、『ファミリー』っていうほうがしっくりくるんだよねー」。ぬぬぬぬぬ、なんだそれは?と若干混乱しつつ、直前に彼女が語っていたことを思いおこし、そことつなげてみようと試みた。

彼女は人の話を色々聴きたい性分だという。色々な人に興味を持ち、色々な質問をし、色々な話を聴きだす、そんなことを繰り返していると「こんなに自分のこと話したの初めて。ねぇ、親友になってくれない?」と請われることが多々あるという。そんな時彼女はこう思うらしい、「あなたにはちゃんと『ファミリー』に入る自覚はあるのですか。そんな甘くないぞよよよよよ〜ん」。当然思うと動くはべっこであり、その場での返答は濁しながらうまいこと話を流しているのだそう。だが、そんなことが積み重なっていった結果、たくさんの親友が、彼女の言葉を借りると「結婚式での友人代表にあらかじめ立候補してくる友人」が、面倒なほどできてしまったという。

もちろんここで重要なのは、彼女の豊富で強固な友人網ではなく、「ぞよよよよよ〜ん」の脳内思考のほうである。ここでいっきに整理してしまおう。彼女の一線を越えた人間関係は、単純化するとこのようなものである(たぶん)。覚悟がなければ入れない(し入らないほうがいい)、入ったあと何かあったらトコトン守る、しかし裏切り行為が発覚したときは・・・・・・、ぎゃぁぁぁあぁぁあぁぁっ!

かつてファミリーの一員に「裏切り行為」が発覚した際は、「それ相応の罰は受けてもらった」らしい。「まぁ、馬の首をベットに忍ばせるまではしないけどね、へへへっ」と笑う彼女の表情から、いつもの可愛らしさだけではない、裏の何か、をこちらが勝手に想像してしまうのであった。