■値上げラッシュに気持ちがついていけない。100円を切ることがなくなった日清カップヌードルは、もはや高級嗜好品に見えてしまう。

一番衝撃的なのはパンだ。コマツさんはパン食主義者と呼ばれるほどの愛パン家。もっとも陶酔していた時期は高校性の頃で、「おいどんは購買の軟弱なパン(ソフトパン)は、断固として食べないでごわす」的なことを吹聴していたこともあった。事実昼休みには、学校から少し離れたパン屋にまで足を運び、そこで焼きたてのフランスパンを一本購入、それを人前でまるまる一本吸い込むように口に入れていたのであった。

「パンばかり食ってたら死ぬぞ!」と肩を揺さぶってくる白飯原理主義者(体育会系に多)の巧みな説得にも一切応じず、「パンはお口の恋人」「パンは響きが男らしい」「ルパン三世のパンは、このパンであるぞよ」など、あることないことを言ったり言わなかったりと、いま思い返すとほんとうにどうでもいいような青春だった(返してくれるなら返してください)。

話を元に戻そう。つまりパンが値上がりしたのである。しかもわかりやすいくらいグイッと。そのためパン屋で食パンを買おうとすると、その価格表示が目に入った瞬間凍りつくいてしまうのだ。こういう状態になると、普段「馬鹿にしているのか」と馬鹿にしていた298円などといった微妙な値段の見せ方というやつの、その効果をみしみしと実感してしまうのであった。

かつてのぎらぎらしていた時代にくらべれば、今は朝食に必ず食う、という程度のパン食率なのであるが、かといって愛しいあのコを裏切って、美白だ白飯だとホイホイ朝からチョップスティックを持つなどという愚行には走れない。そんなことをしたら毎晩、カッチカチのフランスパンやバケットで、アンパンマンオールスターにリンチされる夢を見ることになるだろう。つまり良心の呵責というやつだ。

さらに最近「バター品薄」というニュースもよく聞く。いったいどうなってしまうんだ日本のパン文化は! チベットにおけるブディストのように、日本ではパン食主義者が迫害されているのではないか? 今こそ日本のパン食界の最大の宣教師にして現人神、やなせたかし先生を祭り上げ、現状を打破するため運動を起こす時かもしれない。経営難に陥ったジャムおじさんが泣く泣くバタコさんをリストラするという絵をプラカードに掲げ、農林水産省に直訴するのだ。

実際、米に対するそれと比較して、パンを愛する人々の姿って見えにくいと思う。どの程度の人々が、パンを必要不可欠の国民食、と捉えているのかというのは気になるところだ。嗚呼、テレビなどで平気なツラして「米を食えばいいじゃない」と言い切る心無い輩が憎い・・・・・・。