脳梗塞で入院していた父が無事退院。後遺症で口元の筋肉が扱いにくくなったため、昔から(意味の方が)何言っているか分からなかったのに、さらに(言葉そのものの方が)何を言っているのか分からなくなってしまった。母は「前からわけわかんなかったんだから、しゃべれなくなっても別に大して困らないでしょ」と鬼のようなセリフを本人の前で堂々と吐き、それを耳にした本人は驚きのあまり「グゥゥゥゥゥ・・・・・・」と、正にグゥの音をのどから呻くように出していた(聞き取れないだけで、もしかしたら意味のある言葉だったのかもしれない)。

「我輩の辞書には〈自制〉という文字はない!」という生き方をしてきた父は、様々な病の予備軍に属しており、「これ以上増やすと危険です」と言われるほど大量の薬を常用していて、さらにはアルコール中毒というおまけ付き。だが今回は、まともにしゃべれなくなったことがよほどショックだったようで、医師から言い渡された厳しめの食事制限にも協力的なようだ。

そういえば中尾彬も入院し復帰した後豹変していた。あれだけ偉そうな態度で馬鹿にしていた「健康的な生活」を、今では自分がいかに「健康的な生活」をしているかを偉そうな態度で自慢しているのでビックリしてしまうのだが、親族からしてみれば、そっちの方向にいってくれさえすればあとはどれだけ過去と辻褄の合わない発言をしようと一向にかまわない、というのが本音だろう。

「飲まないくらいなら死んだほうがましだ」と言い放っていた我が父も、今のところお酒を断つ気でいるようなのだが、大変自分にお優しい方なので、今後どうなるかはまったくわからない。というのが俺と母との一致した見解で、いつごろアルコールに手を出すか賭けようではないか、と話は盛り上がり、自分は「半年後」と自信を持って予言したのであった。