アイツが来ない。遅刻である。先に着いた、というかちゃんと時間どおりに来た友人A子とコマツさんは、時間を潰すために愉快に話そうではないか、と目についたコーヒーショップの中に入った。

そこでA子さんは言いました。

酔ったらキスする人っているでしょ、アタシの知り合いにはいないけど。酔うとさ、本能丸出しっていうかさ、自分がホントにやりたい、っていうか、ホントはやりたいってことがデちゃうらしいんだよねー。

「酔って痴漢、とか(笑)」

そうそう、そうそう。あたしは酔うといつも以上にしゃべるらしいんだよねー、笑い上戸っていうの?

「陽気になっちゃう、と」

そうそう、そうそう。ねぇ、酔うとどうなる?

「うーん・・・・・・」

えーっ、言えないやつ? 意外と泣き上戸とか(笑)

「いやいや、泣きはしない(笑)。基本的には変わらないけど・・・・・・、人の話は聞かなくなるね。自分に興味のない話は一切受け付けなくなる。普段からその傾向があると自覚してるんだけど、酔っぱらっちゃうと自分の話と自分に興味のある話以外、脳が完全にシャットアウト」

A子は伏し目がちに口を引き攣らせると(所謂苦笑いというやつだ)、顔を上げ、遠い空を見つめるような感じで(※店内)、アイツ遅いね、と言った。そうだね、と答えた。