コマツさんは叫んだ。

そっ、そんな馬鹿なッ! 
やつらが進入してくるなんて理論上あり得ないッ!!


そう、今オリコンが「その存在自体が許しがたい生命体」というアンケートを行ったとしたら、ガン細胞やエイズウイルスにさえも圧倒的な大差をつけナンバーワンになるであろうアイツが、我が家に入り込んできたのである(しかも二匹!)。

もちろん居心地のいい場所が近くにあればヤツは平然とやってくるので、理論上ありえないなんてことは、よっぽど気温の低いところでなければ無理な話。ウチはそんな環境にはないのだが、ちゃんとお掃除してるジャン!という苛立ちは隠しきれないし隠す気もない。

おかげで近所付き合いも最悪である。「おはようございます」などという爽やかな早朝の挨拶は一切なくなり、顔を合わせれば「お前んちで蔓延らせてんじゃねーのか」と疑りの目で見てしまい、険悪な雰囲気に。事実、不潔な隣人がいると明らかに発生率が違うので、下手をするとこの探りあいは冬まで続くかもしれない。


ヤツが現れると、そのショックのせいか頭の回転が速くなるのだが、今回考えさせられたのはその殺害方法である。おなじみスプレータイプ、ゴキブリホイホイでお馴染みの据え置きタイプ、またちょっと前までよくCMで紹介されていた、巣に持ち帰って全滅させるという遅効性毒薬タイプなど、その殺し方は様々なのだけれど、今回もっとも使い勝手のいいと気づかされたのが・・・・・・そう、スリッパである。

手首のスナップが生み出す衝動を、あれほど効果的伝える小道具は他にあるだろうか。新聞紙や雑誌の丸めたものなど、過去いろいろと試してみたものの、やはりあのカタチがベストだと実感した。もう、ゴキブリクラッシャーという名で販売すればいい(片方だけで)と言いたくなるほど素晴らしい使い易さ。使用後残骸がこびり付いた面を洗わなくてはならないという難点を除けば、ほぼ完璧といえるのではないだろうか。

その魅力にさらに付け加えると、使用時に弾け出す音の爽快さといったらない。かつて、とんねるずの学園モノのコントで、履いているスリッパを脱ぎ、それをボケた相手の頭部に叩き付けてツッこむ、という定番の笑いがあった(なぜか最近見ない)。それは《落下タライ》と並んで優秀な効果音を生み出し、お茶の間にわかりやすい爽快感を伝えてくれていた。

そう、ウンザリするようなゴキブリ退治には、あの爽快感が必要なのである。パンッ! この音がなければ、殺してもどんよりとした空気を背負い込まなければならいという、二重苦を味合わされてしまう。


ありがとうスリッパ。これからもよろしくねスリッパ。彼らに敬意を称して次回作のドラクエでは、初期装備として手に入るものを「おなべのふた」や「くだものナイフ」などではなく、スリッパにするべきだ。と強く訴えていきたい。