■いつ雨が降ってくるのだろう。どんより空の午後、女子中学生が三人、コマツさんの前を歩いている。誰かと一緒に歩くということは、一人で歩くのと比べ、そのスピードはかなり落ちることはみなさんご存知だろう。そのため本来ならば、ひとりぼっちのコマツさんは彼女らの横をスッと華麗に通り過ぎるはずなのだが、それができない。やや狭い道であったので、三人横並びになっていると追い越すことができないのだ。

近づき過ぎても妙なので、一定の距離を保ちながら道が広くなるのを待つことに。しばらく歩いていると、自分の歩幅の狭い前進が運動会での馬鹿げた行進を思い出させ、自ずと苦笑いがこみ上げてきた。

他に誰もいないのでなんとかそんなやり方で凌いでいたのだが、そんなこちらの気持ちをじゃがりこ一本分も感じ取っていないであろう三人組のひとりが、いきなり突然急に立ち止まった。エッ・・・・・・どっ、どっんとすとっぷ! と思わず口に出してしまいそうなほど戸惑ったのだが、そんな気持ちだってフリスク一粒分すら伝わるはずもない。

立ち止まった娘が言う。「なんだか走りたい気分なんだよね、付き合ってくれない?」。他の二人が笑顔で答えると、その女子中学生たちは可愛らしい奇声をあげながら走り去っていった。彼女たちの姿がどんどん小さくなっていくのを眺めながらコマツさんは思った。青春を見た!