あれは確かに日が沈む前のことだったし、人通りが決して少なくない川沿いを歩いているときに起きた。

新しく作られた白い二階建ての家。更地になっていたときから気づいていたので、目に入ると「もうできたのか」と時の流れの速さを嫌でも感じてしまった。少し離れた位置から近づくように、ジロジロと品定めしながら歩いていると、二階の窓に腰をかけている女が目に入った。東南アジア系だと思われる浅黒い肌、どうやらそこでタバコを吸っているらしい。目を疑ったのは突然異国情緒が視覚に入ってきたからではない。その女が全裸だったからだ。

驚きからだろうか、それともただの助平根性からだろうか、歩きながらもその姿から目を離すことができなかった。おそらく20代だろう。細すぎずも太すぎずもしないその体の線が、よけいに年齢を分からなくさせた。そんな不躾な視線に気づいたのか、くいっとこちらに顔を向けたので、互いの目がしっかり合ってしまった。

気まずい。と感じたのは、どうやらこちらだけのようだった。女は窓から消えるどころか、肌蹴た胸を隠そうともしない。その代わり突然ケラケラと笑い出したので、以前「線のようだ」とまで言われた一重瞼の目が、点になっていたのかもしれない。

そのまま歩き続け、その家の横を通り過ぎようとすると、女はタバコを持っていないほうの手を、くるくると可愛らしく振ってきた。こちらも見上げるようにしてそれに答えた。その姿は頭の後ろへと消えていったが、振り返る気にはならなかった。