私は神だ。八百万の神が祭り上げられるこの島で、この私が神でないという理由がどこにあろうか。否定する輩がいるならば、堂々と「そうでない」証拠を出してもらいたい。

先日そのことに気づいた私は愕然とした。「そんな馬鹿な」と何度も口にしてしまうほどで、本業であるブックオフのシール剥がしがしばらく手につかなくなり、収入の面でも大きな打撃を受けた。


良かれと思い口に入れた食物のうち、体内で吸収しきれなかったモノたちが寄り集まり「出たい、出たい」と騒ぐので、真剣にオリンピック中継を観ているというのに、トイレという名の個室に自主軟禁、という状態がここのところ何度かあった。

用事をすべて済ませ、さあ続きをと意気込んで画面に向かうと、驚くべきことが起こっているのだった。さっきまで劣勢であった日本勢が、知らぬまに調子づいているのである。馬鹿な。こんな短い間にいったい何があったというのだ。その時は気のせいだと思うことにしたのだが、その後駄目押しがあった。

同じようにTV観戦中、ちょっとシャワーでも浴びてこようかしらと試合を離れた。風呂場ではいつものように、私は憧れの源静香嬢になりきっていた。ルンルルン♪ 鼻歌を歌いながら温水に打たれ、その最中、どこでもドアでのび太さんが乱入してくるかも(!)と常に背後を警戒、という緊張感を孕んだリラックスタイムを過ごして出て観ると、またもやスコポンポンと点数が入っているのだった。

そして再び私が観戦すると・・・・・・。


古来日本には貧乏神というものがおり、知らず知らずのうちに人々を苦しめたと聞くが、この私もその系統に属する神なのだとその時確信した。そう、私は負け神なのである。私が応援するチームは必ず敗退する運命なのだ。

それがわかっていても試合が観たい、というところが負け神の恐ろしいところである。リモコン片手に付けたり消したりしながら観戦、なんてのは気休めに過ぎない。この神の選手に対する熱い思いは、自然と不吉なエネルギーに変わり、遥か遠い北京でに暗雲のように立ち込めてしまうのである。

早く人間になりたい・・・・・・。

そんな呟きが闇夜に響く。泣きながら眠る負け神は、人々の前に立ち、人間宣言している夢を見るのだった。