コマツさんは趣味の押し付けがだ〜い好き☆ 頼まれてもいないのに、ニタニタとえげつなく微笑みながらいきなり本を取り出し「読めばいいと思う」と直接手渡すのである。友人はいい迷惑だ。特段読みたいわけでもないのに独断と偏見で嵩張るモノを押し付けられ、さらに読め読め読〜んでプレッシャーまで付いてくるのだから。

「法律で禁じられるまでこの行為を止めるつもりはない」、泰然と構えこう言いのけるコマツさんにも、それなりの遠慮というものはあるようだ。貸す際に「気に入らなかったら別に最後まで読まなくていいよ」と言ったり、返却の催促はしないなどというのがそれに当たる。そのため今現在貸し出している数は既に両手両足では足りないほどになり、自宅の空きスペースを考えるとむしろ「返ってこないほうがいいかも」とまで思うことがあるそうだ。

貸した金は返ってくると思うな。渡すならあげる積りで貸しなさい。そうしなければ金だけでなく友情も失うことになるよ。

そう教えたのは母親だという。初めて聞いたときコマツさんは「いいこと言うJAN!」と感じたらしいが、後々似たような言葉を何度か耳にし、元ネタはどこか別のところにあるらしいとは感づいてはいる。しかしながらやはり、その警句は母の言葉として胸に深く刻みつけられているのである。

そしてそのコマツさん母についてだ。昨年から友人の間で韓流ブームが巻き起こり、誰それがひとりイケメンパラダイスだの、あのドラマは泣ける三度見て三度とも泣けるなどとワイワイ騒ぐ日々が今現在まで続いていた。一応放映されているドラマはチェックしていたコマツさん母であったが、それなりに面白いとは思うものの、周りの熱狂と比べ、その温度差を埋めきれずにいたのだった。

それを見かねたご親切な友人が「観ればいいと思う」とお気に入りのドラマが詰まったDVDボックスを貸してくれた。コマツさん母は「レンタルするならまだしも、わざわざ買うなんて信じられない」とボヤながらそれを律儀に観るのだった。全てを観終え「なかなか良かったよ」と返却すると、「良かった☆じゃあこれも好きだと思うよ」と新たなるDVDボックスを渡してきたのであった。そしてそれを見ていたこれまた親切な友人が「じゃあこれも観ればいいと思う」、さらにそれを見ていたグッドフレンドが「じゃあじゃあ私のこれも・・・・・・

DVD地獄である。面白くないわけではないがこんな量になると始末に終えない。その日を境に苦行のようにドラマを観るはめになり、大好きなフリーセルソリティアに費やす時間もなくなってしまった。

そんな光景を見てしまうと「押し付け魔」を自認するコマツさんの癖も、ビタッと止まりそうなものだが、まったくそんなことはない。恐ろしい話である。