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「好きなタイプを芸能人でいうと、経済ジャーナリストの荻原博子だ!」
とわざわざ公言する友人Kは、所謂「熟女好き」である。
それを知ったコマツさんは、友人Kと街中を歩く際、あの人なんてどう?、ねーねー今すれ違った人は?、などと中年女性を見つける度に訊ねてしまうのであった。
それを受ける友人Kも、う〜ん体つきはいいけど顔が・・・・・・、俺には横幅が広過ぎるね、ちょっと若過ぎるなぁーでも将来有望!などと乗り気で答えるので和気藹々。
そんな二人にもしかし、仲を裂くような出来事が起こってしまった。
「あー、今子供連れてた人スゲー好みだわー」
いつものように友人Kが話しかけると、コマツさんは突然怒りを露にした。
「やめなさいそういうの!」
「え?」
「え、じゃない!」
「だっていつもそっちから聴いてくんじゃん」
「だってじゃない! いまの人子供連れてたでしょ?」
「あ、うん」
「じゃあダメでしょ、不道徳でしょ、非・人道的行為でしょそんなの」
「えー、そんなん言い出したらきりないでしょ。今までの人だって一緒に歩いてないだけで子供いるかもしんないし。もっと言えば、さっきの二人の関係だって親子じゃないかもしれない、っていうか好みタイプの話なんだからそんなのどーでもよくない?」
「うるせぇ!」
コマツさんはわざわざ自分の太腿平手で叩きべチッ!怒りを効果音で演出。そして興奮しながらこう続けた。
「そんな本質的な問題を言っているんじゃない。これは俺個人のごくごく表面的で薄っぺらな道徳感情について言ってんだよ。これは俺様正義の押し売りなの。友達なら買ってちょーだい!」
「よし買った!」と友人Kはその場で答えたものの、それ以来二人は面倒くさくなってその手の話はしなくなった。
それからしばらく経って友人Kに彼女ができた。その相手というのが熟女でもなんでもない、っていうか年下じゃん!という事実に対し、コマツさんは、俺のせい?あの時の俺の発言のせい?と若干驚き戸惑っているという。