カレーは強い。誰もまともに戦って、勝てたことがない。未知なるエネルギーを含んでいるその流動体は、どのように行動するのかまったく予想できず、相手はなされるがままとなってしまう。圧倒的なその力を見せつけられ、なす術がないことを知るのだ。無敵の王者カレー。


カレーは知っている。わたしとは誰なのか、真実の本当の意味、あなたが墓まで持っていこうと思っているあの秘密・・・・・・、その程度のことならみんなわかっている。カレーにはありとあらゆる情報が含まれており、記憶や知性という概念を逸脱するそれを、人間が理解できることは永遠にないだろう。全知全能の神カレー。


ある日突然カレーの氾濫が始まった。都内某所、なんの前触れもなく鍋から溢れ出したそれは、瞬く間に区前面に広がり、そのまま千葉、埼玉、神奈川などに渡っていった。人々が「何か対策を」と慌てふためく頃には、日本列島を覆い尽くし、ユーラシア大陸に上陸していた。

自由の女神が腰までカレーに浸かった頃、地球という名の星は黄金に輝いていた。しかしそこで氾濫が止まることはなかった。その後空に向かって上昇していき、あっという間に月を飲み込むと、火星、木星土星と侵食していった末、ゆっくりと太陽を飲み込んでいった。そしてそのまま、膨張する宇宙を追いかけていくかのように、カレーは空間を満たし続けたのだった。