えっち!

スーパーで買い物をしているとき、母親に連れられた少女が真横でこんなことを口にしたため、コマツさんは戸惑わざるおえなかった。

なぜそんなことを? 周囲に変な疑いをもたれてしまうではないか。他の先進国に比べると鈍いとはいえ、最近のオトナはそういうことに敏感になってきているのだよ。ワタシがいったい何をしたというのだ。君には触れもしていなければ、先ほどまで視界にすらいれていない。故に少なくとも直接の被害者というわけでははずだ。ワタシがしていたことといえばただ、目の前にずらりと並ぶ果物、その自然が作り出した艶めかしい曲線を口内に涎と呼ばれる液体をためながら眺めていただけではないか。愛しのマンゴー、麗しのベリー・・・・・・、そう心に思うことが罪だというのか。どうなんだ、ハッキリしたまえ!

そのような意見を眼力で少女に送ってみるも、やはりまったく伝わらなかった。そして彼女は陽気な足取りで他のオトナのところに走りよっていくと、「えっち!」とまた叫び、それを耳にした者を硬直させていた。どうやら覚えたてのその言葉を沢山言いたく、さらに沢山の人に聞いて欲しいようである。怖いからやめて!